TRAKTORの使い方(15) 使いこなせば色々出来る!LOOP RECORDER

おそらくTRAKTORの機能で最も分かりにくいのがこのループレコーダーでしょう。サンプリング(※音を部分的に録音すること)にはセンスが必要だったりしますし、色々と面倒だったりもします。

とはいえと切り捨ててしまうと出来ることが大幅に狭まってしまうので、やはり最低限は把握しておきたい内容です。


LOOP RECORDERの使い方

まずはじめにループレコーダーを使うと何が出来るのかを書いてみましょう。


ループレコーダーではTRAKTOR内で再生した曲(の一部)を録音して再生することができます。通常のデッキと同じように曲を読み込むことは出来ませんが、感覚的にはデッキをひとつ増やせるような感じですね。

『ループレコーダーを使う気は無い』といった場合でも、プレイ開始前に使い勝手の良いフレーズを録音しておくと「一時退避」ができますので曲を繋ぐのに有効になります。こういった小技的なものが出来るものPCDJの利点です。

また、このループレコーダーは曲の動き(オートメーション)も記録することが出来ます。

例えば録音時にボリュームを上げ下げすると、音量が上がったり下がったりするフレーズが録音されるわけです。もちろんエフェクトやスクラッチの動作を記録することも可能です。

では解説に入ります。


ループレコーダーは当然ながらループを録音するものですが、TRAKTORの中の「何」を録音するのかといったことで以下の4種類に分類されます。まずはここからおさえておきましょう。

・MAIN → マスターアウトを録音する
・CUE → ヘッドホンアウトを録音する
・EXT → 外部EXTの音を録音する
・AUX → 外部AUXの音を録音する

ここではメインとなるMAINとCUEについて解説していきましょう。その他のものはルーティングが大きく関係してきますので、その時にでも触れていきたいと思います(覚えていれば)。

MAINは「今現在再生しているもの」を録音します

Aデッキ・Bデッキ両方を再生してミックスしている場合はそのミックス音源が録音されるということですね。要するに『マスタースピーカーで再生されているものをそのまま録音する』のがコレになります。

CUEは「ヘッドホンキューで再生しているもの」を録音します

この場合はマスターにどんな音が再生されていようと関係ありません。マスターアウトのループレコーディングは音がごちゃごちゃし過ぎてしまう場合が多いので、用途としてはCUEの方が出番が多いのではないかと思います。

LOOP RECORDERを使ってみる

ではループレコーダーを実際に使ってみましょう。ループレコーダーは使用する流れで覚えていった方が楽に理解できます。

(1)まずサイズを決定する

まずはループのサイズを決定します。サイズは4拍(1小節)、8拍(2小節)、16拍(4小節)、32拍(8小節)の4種類が用意されており、「SIZE」のボタンをクリックすることで随時変更されていきます。


今回はMAINを使っていますが、CUEであっても内容は変わりません。

(2)とりあえず録音してみる

今回は16拍(4小節)サイズで録音してみることにしました。


録音ボタンを押すと赤く点灯し録音がスタートです、バーが赤なって右方向に動きます。

(3)録音が終わると自動再生!

16拍分の録音が終わると録音が自動的に停止し、停止と同時に記録したループが「自動再生」されます。


ループレコーダーが再生中の場合はバーが青色になって動くのが確認できます。

(4)録音した音が再生されない場合はDRY/WETを確認する

もしループレコーダーに記録した音が再生されない場合はDRY/WETを確認しましょう。


DRY/WETはエフェクターにも登場する概念ですが、これは『どれくらい音(orエフェクト)を再生するのか』という割合を示すパラメーターです。ドライの場合は0%でウェットの場合は100%となります。

この場合に注意しなければいけないことは、「ループレコーダーを100%にしてしまうとループレコーダーの音しか聞こえなくなる」ということです。

簡単に分類すると下のようになります。

・100%(WET)→ループレコーダーの音のみが再生、デッキの音は聞こえない
・50%→デッキの音が50%、ループレコーダーの音が50%再生される
・0%(DRY)→デッキの音のみが再生、ループレコーダーの音は聞こえない

理屈はさて置きこのようになっているので覚えるしかありません。

まぁ…デッキとレコーダーをミックスする場合はとりあえず中心に設定しておけばよいということですね。いきなり音を被せたくないという場合は最初から0%(DRY)に切っておきましょう。

(5)音を更に被せて録音してみる

ループレコーダーは何度でも上から重ねて録音をすることが出来ます。


これは「オーバーダブ」と呼ばれる録音方法で、前の音を消去することなくレイヤーのような感じで重ねて記録する方法のことを言います。そのようなわけであまりにも重ねすぎると元の音がぐちゃぐちゃになってしまうのでそこそこでやめておいた方が良いものでもあります。

オーバーダブ録音は最初と同じように録音ボタンを押せばスタートです。ただ、オーバーダブの場合は録音が自動停止しないという点に注意しなければいけません。放置しているとあっというまに録音したループがぐちゃぐちゃになります。

また、オーバーダブの場合は録音のタイミングを自由に選べるという点にも注目する必要があります。

言葉で説明するのは難しいのですが、通常のループレコーディング(※便宜的に1stループレコーディングと呼称します)の場合は、例えば16拍サイズであれば16拍全てを録音する必要があるため、『半分の8拍分だけ録音して途中で止める』といったことは出来ません。このようなことをするとループレコーディングそのものが中止されてしまいます。

対してオーバーダブの場合はそのようなことはありません。この場合は半分の8拍分だけ録音して途中で録音を止めてもレコーディング内容はきちんと記録されています。つまり、オーバーダブ録音は1stループレコーディングに瞬間的にアクセントを加えるようなことが出来るわけですね。

オーバーダブは「重ねすぎると元の音がぐちゃぐちゃになる」と書きましたがアクセントであればそんなことにはなりません。

アクセントの例としてスクラッチを記録する場合を考えてみましょう。この場合はスクラッチの瞬間にRECを押し(※オーバーダブ開始)、スクラッチが終わった瞬間に再度RECを押せば(※オーバーダブ停止)スクラッチの音「だけ」をループレコーディングに記録することが出来ます。

また、歌のバラードの頭だけを瞬間的に切り取っても面白い効果が生まれたりします。バラードは音を伸ばすものですが、発音の最初だけを切り取ることでロボット的というかシンセ的な音になったりします(この場合はさらにエフェクトをかけるとより効果的です)。

長くなりましたがオーバーダブはこのような機能です。ちょっと面倒な感じもしますがこれを超えたらあとは簡単です。適当にRECボタンを押して遊んでいれば感覚として理解できると思います。

(6)被せた音(オーバーダブ録音した音)を消去する

音を被せる場合は当然ですが失敗することもあります。その場合は「UNDO」を押すことで一番最後にオーバーダブしたものを消すことが出来ます。PC作業でいうところの「Ctrl+z」と同じような感じですね。


ただ、UNDOは「Ctrl+z」とは違ってひとつ前の録音しか消すことが出来ません

そのようなわけでオーバーダブは失敗したらその都度消していけないといけません。まぁ失敗したものが残っていても邪魔にしかなりませんので、「ひとつ前の録音しか消すことが出来ない」ということは実際には不便でもなんでもなかったりしますが…。

『やっぱりあのオーバーダブが必要だった!』と言う場合は「REDO」を使って取り消したものを復活させることが出来ます。これもUNDOと同様に復活させることが出来るものは最後に取り消したものだけです。

(7)レコーダーに記録したものを保存する

これがループレコーダーの真骨頂かもしれません。

せっかく素晴らしいループが完成しても、一回きりのループになってしまうのは勿体ないですよね。そのようなわけで、TRAKTORではループレコーダーに記録したモノをREMIX DECKに保存してサンプル化することが出来ます

サンプル化のやり方は非常に単純です。


ループレコーダーのサイズの部分(※厳密にはボタンやノブ以外ならどこでもいいのですが)をリミックスデッキの各スロットにドラック&ドロップしてしまえば勝手にサンプリングされます(便利!)。

作成したリミックスデッキはデッキ番号(ABCD)を右クリックすることで保存できますので、良いサンプル集が出来たのであれば面倒であってもしっかりと保存しておきましょう。

REMIX DECKについてはまた後程取り上げると思いますが、簡単に説明しますと「短いループをたくさん保存することが出来るデッキ」のことです。ableton liveでいうところのセッションビューと同じような機能になっています(流石にableton liveほど多機能ではありませんが)。

(8)ループレコーディングしたものを消去する

これは単純に「DEL」ボタンで消去することが出来ます。


少しだけ注意しなければいけないことは、ループレコーディングが再生している状態では消去出来ないということですね。消去するには停止状態でないといけません。


以上でLOOP RECORDERは終了です。かなり長い内容になってしまいましたが、実際のことろ慣れてしまえばさほど難しくはありません。

リミックスデッキを作成する上では欠かすことのできない要素なので、ループを多用するテクノやハウスといったジャンルを好まれる方は何を差し置いても覚えてしいましょう。
 

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